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学術活動

透析液濃度を考える -透析液濃度調整は大丈夫?-

  • 日付
    2015/05/23
  • 学会・研究会
    第25回 日本臨床工学会
  • 発表者
    江村宗郎
  • 所属
    茂原

現在、わが国で使用されている透析液は、重炭酸透析液が主流であり、透析療法の変遷とともに、その組成も変化してきた。透析療法の創成期は、バッチタンクに1透析分の薬剤と水を入れ、溶解して使用する方式の重炭酸透析液であったが、炭酸塩の析出など不安定なものであった。1960年代後半になると1剤化された酢酸透析液および多人数用透析液供給装置が開発され、血液透析が広く普及する一因となった。 
 その後、透析膜性能の向上とともに酢酸不耐症が問題となり、1980年代には2剤化された原液を用いる重炭酸透析液に再び移行したが、近年の透析膜高性能化、大面積化に伴い、pH調整用として用いる少量の酢酸が問題視され、クエン酸緩衝系の無酢酸重炭酸透析液が開発されている。 
 透析液は、医薬品である透析液原液または同原粉末を、医療機器である透析液供給装置を用いて透析用水と混合することで適正濃度に作製し、透析用監視装置およびEndotoxin retentive filter(ETRF)を経由してダイアライザに供給される。透析液作製の流れにおいて、透析用水を作製する水処理装置、透析原粉末溶解装置およびETRFなどは、非常に重要な機器・装置にもかかわらず、医療機器としての認可を取得したものではない。しかしながら、これらの装置・機器は、透析液の清浄化および適正濃度を維持するために必要不可欠であるため、医療機器管理と同様に扱わなければならない。 
 透析液作成時に濃度誤差を生じる主な要因として、A原液(A原粉末)の製品作製時の誤差、AB原粉末溶解時の誤差および原液と透析用水混合時の誤差等がある。また、作製した透析液の濃度測定時は、透析液の採取方法の誤差、測定機器の精度と測定誤差等がある。 
 透析液濃度に異常が発生した場合、患者の生命に危険が及ぶ可能性がある。特に多人数用透析液供給装置を用いた場合は、多数の患者が被害をうける危険性があり、現在では、作製した透析液が逆ろ過や直接血液中に注入されるため、透析用水を含む透析液清浄化および適正な濃度の透析液を供給することが必須である。これは、血液透析業務にかかわる臨床工学技士の責務であり、透析液の清浄化はもとより]適正な濃度管理および各透析機器の保守管理を確実に行い、安全な透析治療環境を構築しなければならない。

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