学術活動
多人数用透析液供装置内に貯留する透析液組成変化についての一考察
-
日付2018/05/26
-
学会・研究会第28回日本臨床工学会
-
発表者束原遠
-
所属茂原
【背景】
多人数用透析液供給装置(CDDS)における重炭酸透析液濃度の経時変化について第59回および第60回日本透析医学会学術集会において報告し、CDDS貯留タンク内の透析液が送液されていない状態では、pCO2およびpHが経時的に変化することを確認した。これは貯留タンク内が大気開放状態になることによって起こると考えた。
しかしながら、CDDS貯留タンクと送液ラインの間では、常に透析液が循環し、その配管にはシリコンチューブが多くの部位に使用されている。シリコン膜は気体透過性が高いため、シリコンチューブ内でも透析液の組成が変化する可能性がある。
【目的】
本研究では、シリコンチューブ内での透析液の経時的な組成変化を測定し、その影響を検討した。
【方法】
1.個人用透析装置の透析液供給ラインにシリコンチューブを接続し、透析液を満たした後、10cm毎に鉗子でクランプし、クランプ直後から5分、10分、15分、30分後のチューブ内透析液濃度の測定を行った。
2.内表面積125cm2のシリコンチューブ内に透析液を充填し、流速400mL/minで循環させ、0分、5分、10分、15分、30分後のチューブ内透析液濃度の測定を行った。また、対照として同表面積のフッ素ポリマー系チューブを用いて同様に測定を行った。
【結果】
方法1では、pCO2が開始時52mmHgから30分後35mmHgまで減少し、pHは7.36から7.54に上昇した。
方法2では、シリコンチューブを用いた場合、pCO2およびpHの変化は方法1より小さかったが、同様の傾向であった。フッ素ポリマー系チューブを用いた場合、pCO2およびpHに大きな変化はみられなかった。
【考察】
シリコンチューブ内の透析液は、貯留および流動状態において、透析液組成が変化することを確認した。
pHの変動は、気体であるCO2の減少によるものと考えられた。
これらの結果から、CDDSにおいて透析液を送液しない状態で循環させている貯留タンク内では、大気開放になっていることに加え、シリコンチューブからのCO2の透過によって透析液の組成が変化する可能性が考えられた。