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学術活動

血液透析患者の鉄状態と鉄剤の持続点滴注入法

  • 日付
    2013/06/23
  • 学会・研究会
    第58回日本透析医学会学術集会
  • 発表者
    前田貞亮
  • 所属
    武蔵小杉

【目的】血液透析(HD)患者の赤血球造血にとってESAと共に鉄は不可欠であるが, 過剰は多くの細胞, 臓器に障害を起こす上にESA抵抗性にもなりかねない. そしてヘプシジン(Hpc)は鉄の動きに重要な役割をもっている. 非経口的鉄剤投与は急激なフェリチン(Ft)の増加とHpc上昇を起こす. 急速な鉄のボーラス投与よりも, 緩やかに点滴注入することでHpcの上昇を遅らせることが出来るかを検討した. 
【方法】ESA投与のHD患者194例の血清Ft(ng/mL)とTSAT(%)をもとにした鉄状態の分類を行い, 鉄過剰(Ft>100, TSAT>20), 鉄回転不足(Ft>60, TSAT<20), 鉄充足(100>Ft>60, TSAT>20), 理想的鉄状態(Ft<60, TSAT>20), 鉄欠乏(Ft<60, TSAT<20)の5つに分け, その中の鉄欠乏群中5例に静注用鉄剤2mL(鉄40mg)を20%グルコース20mLに希釈し, HD操作開始から終了まで, 血液回路にシリンジポンプにて点滴注入する(鉄10mg/時間). 又, 他の5例に透析終了時に同様の鉄希釈液を回路内にゆっくりボーラスで注入し, TSAT, Ft, Hpc, ヘモグロビン(Hb)濃度の変化を求めた. 半量20mgの鉄投与も併せ検討した. 
【結果】1日後, 点滴注入とボーラスではTSAT血清Ftに差はないが, Hpcはボーラスに比し, 点滴注入で上昇は弱い. Hbに有意な差はなかった. 
【考察】Hpc生理的範囲30ng/mL以下は, 鉄分類での鉄欠乏(8.9)理想的鉄状態(13.9)鉄充足(29.2)である. 50ng/mL以上は鉄回転不足(57.4), 鉄過剰(58.9), である. Ftの平均値は夫々21.6, 29.9, 76.4, 104.6, 206.3各ng/mLであった. Hpcの高い鉄回転不足と鉄過剰群はFtも高くHbは低い. Hpcを低く保つことは鉄の回転をよくし, Hb増加につながる. 又, HpcはHDで除かれるが, 鉄過剰があると, 再び産生され体内鉄回転の抑制につながる. 鉄投与に際してHpcを減らすことが求められる. 非経口的鉄投与の場合持続点滴注入はHD患者にとって有利である. 
【結論】HD患者の非経口的鉄剤投与に際しては, 点滴注入法が優れていると考える.

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